福岡にて
 福岡市天神・・・九州の中心街ともいえる繁華街。


少佐らと別れてひと足先に九州に乗り込んだウムラウト。目的の少女と接触を図るべく

ライブハウス黒猫を目指していた。


その時・・・


「何すんだよ!やめろよ!」

一人の少女が数人の男達に囲まれてボコにされていた。

彼は助けに入り

「婦女子を大の男数人でいじめるのはいけないぞォ〜!」

と彼はニヤけながらそのうちの一人の胸倉を掴んで流暢な日本語で挑発した。


「てめえ!外人のくせに何しやがる!

男達は彼にケリを入れた。

「大丈夫か?」

少女が心配そうに声をかけると、彼は突然笑いだした

「ヒヒヒヒヒヒヒヒ!Totschlagen(殺す)!」

そう叫ぶと彼らのうちの一人の髪の毛を掴み、思いっきり腹蹴りをする。

倒れた男に対してなおも蹴り続ける・・・


「ごめんなさい!許して下さい!」


は泣きながら助命嘆願をする。しかし・・・

「ん?聞こえんなぁ〜」

彼は聞こえぬフリをして痰をかけながら蹴り続ける。ところが・・・

「やめて!死んじゃうからやめて!」

少女は彼の行動を止めさせた。男達はビビリながら逃げていく。



「悪い!つい昔の癖が出てしまって。それより君は大丈夫かい?」

少女は落ち着きを取り戻した彼の姿に安心したのか、あっけらかんとした顔をして

「あんたこそ大丈夫け?それよりあんたどこから来たん?」

彼は半分トボけながら答える

「ああ、ドイツのベルリンからさ。遠藤ミチロウのライブを見に行くついでに観光さ。」

少女はドイツと聞いて目を輝かせながら喋りだす

「ベルリンから?じゃ、DDRっつーバンド知っとる?うち、そこのリーダーのヨハンのファンじゃけん。」

彼は目が点になりつつもトボけて答えた。

「俺もバンドやってたからヨハンは知ってる。凄い奴だぞ。ところで君、名前は?」

少女は照れながら答える

「うちの名前は松岡千恵。この通りバンドをやっとるけん。あんたの名前は?」

彼はトボけながら

「俺か?おれはウムラウトだ。一度キミのライブを見たいな。元ギタリストとしてね。」

千恵は嬉しそうな顔をして

「じゃ、今から来る?ちょうどあるからさ」



ウムラウトは千恵に連れられて天神の裏通りにあるライブハウス黒猫にやって来た。


「今日はライブじゃなくて今度長崎であるシーボルト記念祭の時のライブの練習なんだ。」

と、そこへ千恵のバンド仲間の一人が深刻な顔をしてやって来た。

ギタリストがバイク事故で入院したそうだ。


千恵は非常に困った顔をして

「どうすんだよ、晴れ舞台に出れないなんて・・・・」

と半泣きで叫ぶ。


すると、ウムラウトが・・・

「俺、やってやろうか。伊達にベルリンでギタリストやってたわけじゃないし・・・」

その言葉に千恵は喜んだ。他のメンバーも意気投合し、正式加入となる。



ウムラウトの正体がまさか・・・・ということを千恵は知らぬままフェスティバルに向けてのセッションは続く。


つづく